望まない妊娠や、体に負担のかかる中絶手術を繰り返さないためにも、安全で確実な避妊方法について普段から考えておく必要があります。
日本ではコンドームによる避妊が一般的ですが、装着しても避妊率が100%ではないことや、男性に避妊を委ねなければならないリスクもあって、確実な方法とは言えないのが現実です。
そんな中、最近になって日本でも認可され、女性が自らの意思で自分の体を守ることができる避妊法として普及しつつあるのが低用量ピル。1960年にアメリカで発売されて以来、世界中で9000万人以上の女性が使用しているというポピュラーな避妊薬です。
安心で確実な低用量ピルを使った避妊法について考えてみましょう。
低用量ピルは、主に3つの作用によって妊娠を防ぐとされています。
ひとつは、脳から出る卵胞を成熟させるホルモンに働きかけることで、排卵を抑制する作用。
卵巣の機能が抑制されて排卵がおこらないため、受精が成立しないわけです。次に、子宮内膜の増殖を抑えることで、着床を抑制します。普通は月経周期に伴って受精卵が着床しやすいよう、子宮内膜が厚くなるのですが、ピルを飲んでいる間はそれがおこらないので、受精卵があっても着床しにくくなるのです。最後に、子宮頚管から分泌される粘液を変化させて、精子が子宮内に入りにくいようにガードする作用があります。
低用量ピルを服用すると、この3つの作用により、妊娠を抑制できると言われています。
出典:(PDF) 低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤のガイドライン作成 小委員会 : 『低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤 ガイドライン(案』[PDF]
低用量ピルを服用すると、体内のホルモンが妊娠中と同じ状態になり、脳が妊娠したと錯覚して排卵がなくなるのだとか。いわば、人間が妊娠や出産に関して持っている自然な働きを利用した避妊薬です。
排卵を止めることが体に悪影響となるのでは?と不安に思う方もいらっしゃるかと思いますが、心配はご無用。
実は、現代の女性はライフスタイルの変化によって妊娠や出産の機会が減っていて、生涯で起こる排卵や生理の回数が昔に比べて大幅に増加しているそう。それを起因とした子宮内膜症や卵巣ガンなどの婦人科疾患も増加傾向にあるのです。ですから、ピルを使って排卵回数を抑えることで、避妊の効果が得られるだけではなく、病気のリスクを減らすことができると考えられています。
さらに、ピルを長期間服用している方でも、服用を中止して3ヶ月以内に、90%の人が以前の排卵周期に戻っていることが確認されていますので、将来の妊娠・出産にも影響はありません。赤ちゃんが欲しいと思った時にピルの服用をやめるだけで、排卵は再開されるのです。
出典:(PDF) ノーベルファーマ株式会社: 『生物薬剤学及び関連する分析法 の概要』[PDF]
低用量ピルには、いくつか種類がありますので、ご自身のライフスタイルや体調に合わせて選択することが可能です。
大きく分けると1錠ずつホルモンの配合が変わる“三相性ピル”と1錠のホルモン量が一定の“一相性ピル”とがあります。三相性ピルは、数日ごとに女性ホルモンの配合比を変えて生理的なホルモンの動きに近づけているのが特徴。一相性ピルはどれも同じ錠剤なので飲み間違いがなく、生理予定日を簡単にずらすことができます。
どちらのタイプも21日間連続して飲んだら7日休む『21錠タイプ』と飲み忘れを防ぐために28日間連続して飲む『28錠タイプ』があります。1ヶ月分が1シートにまとめられていて、1シート単位で処方されます。薬の種類やクリニックによって金額は異なりますが、1シート2000円〜3000円前後で処方されていることが多いようです。
飲み方は2種類あり、ひとつは、生理が始まった日を第1日目として飲み始めるday1スタートという方法。もうひとつは、生理が始まって最初の日曜日に服用を開始するサンデースタートという方法です。
初めての場合は、分かりやすいday1スタートがよいでしょう。飲み始めて最初の生理が終わるころには避妊効果があると考えます。これを基本として、この後はずっと28日サイクルを継続していくわけです。
サンデースタートは、毎月の生理開始日が火曜日か水曜日になるので週末に生理が重ならなくなるメリットがあり、最近はサンデースタートを希望する人が増えているそうです。ただし、サンデースタートの場合は、飲み始めの最初の1週間は避妊効果がありませんので注意が必要です。
ほかに、生理周期のどこからでも始められるクイックスタートという方法もありますから、自分に合った方法をクリニックで相談してみるとよいでしょう。
低用量ピルは、避妊だけでなくホルモンに関係する女性特有の病気や症状を改善するためにも用いられています。 保険適用され、クリニックなどでも処方されている「ルナベル配合錠LD」は、「子宮内膜症に伴う月経困難症」や「機能性月経困難症」の適応で承認を取得しており、生理不順や生理痛、PMS(生理前症候群)などの緩和にも役立っています。 生理不順や生理にまつわる諸症状も女性ホルモンの乱れによって引き起こされるので、ピルを飲むことで女性ホルモンの変動を緩やかにし安定させて、症状を和らげてくれるのです。
ほかにも、卵胞ホルモンが過剰に分泌されることによる子宮頸がんや、排卵によって傷ついて卵巣の病気につながることを防ぐためにもピルは利用されています。 低用量ピルは、クリニックで保険適用され処方してもらえますが、避妊目的で処方してもらうことはできません。
あくまで月経困難症の治療薬としての処方になりますので、低用量ピルを処方してもらいたい場合は、月経痛がひどいなどの理由で診察を受けるようにしましょう。 ピルというと、どうしても避妊のイメージが強いですが、女性ホルモンの乱れによる症状に悩んでいる人も、利用することで改善されることはたくさんありますので、クリニックなどで相談してみてください。
出典:(PDF) 処方箋医薬品: 『ルナベル配合錠LD/ルナベル配合錠ULD』[PDF]
出典:(PDF) ノーベルファーマ株式会社: 『ルナベル配合錠 LD ルナベル配合錠 ULD 2.2 緒言』[PDF]
アフターピルは、避妊に失敗した場合や緊急時に使用するもので、計画的に服用して避妊するほかのピルとは使用方法や成分などが異なります。
アフターピルの種類
アフターピルには新旧で2種類の薬剤があります。
アフターピルのメリットデメリット
低用量ピルは、事前に計画的に服用しないと避妊の効果がないため、コンドームと使用した避妊の失敗などの緊急時には、アフターピルの存在によって望まない妊娠を避けることができます。 新しい薬剤のノルレボ錠なら副作用も少なめで効果も高いため、いざという時に利用することで中絶のリスクを下げることができます。
ただ、アフターピルも100%の避妊効果があるわけではありません。 アフターピルがあるから安心と油断していると、望まない妊娠や中絶を繰り返してしまうことにもなりかねません。 あくまでも、アフターピルは緊急時の最終手段として利用するのにとどめておき、普段からコンドームによる避妊を徹底し、低用量ピルによる避妊薬なども併用して安全性を高めるようにしてください。
コンドームでの避妊に失敗した場合や、ピルを飲み忘れてしまった時、性的暴行を受けてしまった場合などに、緊急措置として避妊薬を処方してもらうことができます。
いわゆる“アフターピル”と言われるもので、以前は中用量ピルなどを転用して緊急避妊が行われていたのですが、2011年に日本でも発売となったノルレボという薬によって、副作用が少なく安全に緊急避妊ができるようになりました。
ノルレボは特殊な黄体ホルモンを使用した薬で、避妊に失敗した後72時間以内に2錠服用します。排卵を遅らせで妊娠を抑制する作用がある薬なので、すでに排卵してしまった後や、服用した後にセックスを繰り返してしまった場合は、妊娠する可能性があるとされています。なお、避妊成功率は80%程度で、服用後1週間程度で生理が来れば避妊成功です。
緊急避妊薬は、72時間以内に服用しなければならないという制限がありますから、もしもの緊急事態に対応してもらえる、以下のようなクリニックをチェックしておくと安心です。
【免責事項】
当HPは2014年1月の情報を基に、個人の主観を持って編集を行っています。中絶手術による安全性を保証する意図はございません。中絶手術の内容や費用に関する詳細は、各クリニックの公式HPにてご確認いただくか、直接電話にてお問い合わせください。
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中絶手術は自費診療であり、なおかつクリニックによって費用に含まれる処置の内容が異なるため、最低金額と最高金額に大きな差があります。当サイトでは、治療メニューの詳細に関しまして、個人の調査で確認できた範囲の情報のみ掲載しています。